以下JIAEC NEWS 2006年12月号より抜粋
□埼玉県
□耐摩耗・耐食溶接材料、自動溶接装置の輸入販売、耐摩耗・耐食溶接施工業
□研修職種:溶接(作業名:半自動溶接)
□従業員:20名
耐摩耗・耐食肉盛溶接の分野で国内トップを目指す株式会社Wは、現在3人の研修生・実習生を受け入れている。研修生期間中は社長みずから毎朝30分、日本語やルール、技術の基礎を繰り返し指導したり、社内で行っているネイティブスピーカーによる英語のクラスにも研修生・実習生が参加している。同社の研修生・実習生の人材育成の現場を訪問した。
身近な国際交流
株式会社Wの社長は、研修生・実習生が20年〜30年後に「日本に行ってよかった」と心底思えるようになって欲しいというのが、最大の願いだという。そのためには、今は厳しいことも言わなければいけないという心構えで研修生・実習生と接している。
「異文化と接するのが好き」と語る社長は、財団法人海外技術者研修協会(AOTS)の講師として発展途上国の人材育成の一翼を担ってきた経験がある。研修・技能実習制度を知った時、身近にできる国際交流として最も理想的と考えたそうだ。
社長は毎朝30分、研修生に日本語やルール、技術の基礎を指導している。社長が不在の時は他の社員が交代で担当し、研修期間中は1日も欠かしたことがない。
基礎を繰り返し指導するのは、基礎が身につけばあとは自分で応用できるようになるからだ。
日本語や技術の指導の目的は、彼らの能力を引き出すこと。上手くできた時にほめることを忘れなければ、間違いを指摘した時にも自然に受け入れられるようになるという。
研修生が刺激に
社長は同社について、小さな会社ながら「標準ものさし」が使えることが特徴と説明する。耐摩耗・耐食肉盛溶接の分野で事業拡張を目指す同社では、どこでも通用する基準や、同社の技術を公開して外部から評価してもらう仕組みなどを採用しているという。
「会社を伸ばす」というのは、研修生・実習生を含めた全社員共通の目標。社長は、インドネシア人研修生・実習生は高いプライドを持っているので、研修生・実習生にも共通の高い目標やルールを設定して、一緒に進んでいくのが望ましいと話している。同じルールを他の社員とともに守り、同じ目標に向かっていく過程で仲間意識が生まれ良好な関係が築けるのだ。
研修生受け入れによる効果もある。研修生にも分かるように、社員が標準の日本語を使うようになったこと。そして、一緒に仕事をする中で垣間見える研修生・実習生の発想の違いや忍耐強さが、日本人社員に与える刺激を期待しているという。
現在3年間の研修・技能実習期間が今後延長されれば望ましいが、それには「受け入れ企業に魅力がなければいけない」と強調した。
日本での生活をサポート
生活面では、総務部リーダーが母親代わりとなって気を配って下さっている。総務部リーダーは海外で生活した経験があり、親元を離れての生活が「大変なことは良く分かる」と語る。インドネシアの親御さんからお預かりしているという意識があるので、元気で帰ってほしいというのが一番の願いだ。
研修生を受け入れるようになってから、インドネシア関連のニュースに敏感になったという。世界中の数ある国の中でインドネシアという国を知ることができたのは「とても幸せなこと」。
研修生ができるだけ自然に日本の生活になじめるように、全社員にイスラム教徒が豚肉を食べられないことを周知徹底したり、親戚のお墓参りに連れて行き日本の文化と習慣を紹介するなど、手助けをしてくれている。一期生の帰国が近づくにつれ、「彼らの故郷をいつか訪れてみたい」との思いが高まっている。
研修生・実習生は休日には、空手を習ったり、テニスサークルに参加したり、地域指導員の先生や会社の方と一緒に寮の草むしりをしたり、日本人との交流を十分楽しんでいるようだ。
同社グループは英国を拠点に世界各地で27社が事業展開しており、インドネシア法人も設立されている。社長は、実習生が帰国時に自信を持って推薦状を持たせるつもりでいる。 |